労作性倦怠感と慢性化
新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」へ移行し、社会全体は落ち着きを取り戻しつつあります。 しかしその裏で、コロナ後遺症による倦怠感に悩む方は確実に増えています。
特に問題となっているのが、 労作性倦怠感(PEM:Post-Exertional Malaise) と呼ばれる、通常の疲れとは明らかに異なる強い倦怠感です。
労作性倦怠感とは何か
労作性倦怠感とは、 「軽い動作や日常生活の行動で、強い疲労が出て長時間続く状態」 を指します。
例えば、
- 起き上がる
- 洗顔・歯磨き
- 朝の準備
- 軽い散歩
- 家事
こうした“普通なら疲れない動作”で、 体が鉛のように重くなる、動けなくなる、頭が働かない といった症状が出ます。
通常の疲労とは違い、 休んでも回復しにくい のが特徴です。
慢性化とは何が起きているのか
ここから、今回のテーマである「慢性化」をさらに詳しく解説します。
労作性倦怠感が慢性化するとは、 身体の回復システムが長期間うまく働かなくなる状態 を意味します。
単なる疲労の蓄積ではなく、 身体の複数の機能が同時に低下し、悪循環が続くことが問題です。
① 自律神経の恒常的な乱れ
コロナ後遺症では、交感神経と副交感神経のバランスが崩れます。
慢性化すると、
- 交感神経が過剰に働き続ける
- 副交感神経が回復モードに入れない
- 身体が常に緊張状態になる
という状態が続きます。
その結果、
- 動悸
- 息苦しさ
- 不安感
- 集中力低下
- 体温調整の乱れ
などが慢性的に続き、疲労が抜けなくなります。
② 免疫系の過剰反応が続く
感染後、免疫が過敏になり、 軽い刺激でも疲労が悪化する体質 に変わってしまうことがあります。
- 少し動いただけで炎症反応が高まる
- 免疫が常に“戦闘モード”になる
- 身体が休まらない
これが慢性疲労の大きな原因です。
③ 脳のエネルギー代謝の低下
最新の研究では、 脳がエネルギーをうまく使えなくなる という報告もあります。
そのため、
- 頭が働かない
- 思考が遅くなる
- 物忘れが増える
- 判断力が落ちる
といった“脳疲労”が慢性化します。
④ 睡眠の質が低下し続ける
睡眠は回復の要ですが、 自律神経が乱れると睡眠の質が大きく低下します。
- 浅い眠り
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 夢が多い
- 寝ても疲れが取れない
これが続くと、 疲労が蓄積 → 倦怠感が悪化 → さらに眠れない という悪循環に陥ります。
⑤ 心理的ストレスが疲労を固定化する
慢性化の背景には、心理的ストレスも深く関わります。
- 「早く治さなきゃ」という焦り
- 仕事や学業へのプレッシャー
- 孤独感
- 将来への不安
これらは自律神経をさらに乱し、倦怠感を固定化します。
特に若い世代は、 責任感が強く、無理をしやすい ため、慢性化しやすい傾向があります。
東洋医学から見る慢性化のメカニズム
東洋医学では、労作性倦怠感の慢性化は 「気の不足」「脾の弱り」「肝の乱れ」 が複合的に起こっている状態と考えます。
気の不足(気虚)
感染後は気が大きく消耗し、補充が追いつかなくなります。
- 少し動いただけで疲れる
- 体が重い
- 声に力がない
これは典型的な気虚の状態です。
脾の弱り(脾虚)
脾はエネルギー生成の中心。 脾が弱ると、
- 食後のだるさ
- 胃腸の不調
- 倦怠感の悪化
が起こります。
肝の乱れ(肝気鬱結)
肝は自律神経の働きと深く関わります。
- イライラ
- 不安
- 気分の波
- 睡眠の質の低下
これらは肝の乱れによるものと考えられます。
慢性化した倦怠感は、 脾と肝の両方が弱り、気が不足する複合状態 になっていることが多いのです。
慢性化を防ぐために大切なこと
労作性倦怠感は、 「頑張れば治る」タイプの疲労ではありません。
むしろ、頑張るほど悪化します。
① 無理をしない
症状がある間は、活動量を意識的に減らすことが重要です。
② 休息を“計画的に”取る
疲れてから休むのではなく、 疲れる前に休むことがポイントです。
③ 睡眠の質を整える
深い睡眠は自律神経の回復に欠かせません。
④ ストレスを減らす
精神的ストレスは倦怠感を悪化させます。
⑤ 身体の回復力を高めるケア
東洋医学では、
- 気を補う
- 脾を整える
- 肝の巡りを良くする といったアプローチで、身体の回復力を高めるサポートができます。
まとめ:慢性化は「身体のSOS」
労作性倦怠感は、
- 軽い動作で強い疲労
- 休んでも回復しない
- 数時間後に悪化する
という特徴があり、普通の疲れとは全く異なります。
慢性化すると、 自律神経・免疫・脳・睡眠・精神面 すべてに影響が広がり、日常生活が困難になることもあります。
感染後は、 「若いから大丈夫」 「軽症だったから平気」 という考えは危険です。
身体の声をよく聞き、 無理をせず、早めにケアを始めることが大切です。
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